○いなべ市議会基本条例

平成29年3月28日

条例第7号

目次

前文

第1章 総則(第1条・第2条)

第2章 議会及び議員の活動原則(第3条―第6条)

第3章 議会と市民の関係(第7条―第10条)

第4章 議会と執行機関の関係(第11条―第18条)

第5章 議会力及び議員力の強化(第19条―第24条)

第6章 議会運営及び体制整備(第25条―第30条)

第7章 倫理、身分及び待遇(第31条―第33条)

第8章 最高規範性、見直し手続等(第34条―第37条)

附則

いなべ市議会は、いなべ市民によって選ばれた議員により構成された合議制の機関であり、同じく市民によって選ばれたいなべ市長とともに二元代表制の下、緊張関係を保ちながら市民の負託と信頼に応える重要な役割と責任を負っている。また、地方分権の進展に伴い、自治体の自主的決定と責任範囲が拡大され、議会が果たすべき役割が更に求められている。

故に、議会は議決機関として、執行機関に対する監視及び評価機能を発揮するため、議員間で公平かつ適正な議論を尽くすとともに、議決責任を強く認識し、真の地方自治の実現を目指すものである。

そこで、市民に開かれた議会として活動理念を明らかにし、自ら継続的に議会改革に取り組むことにより、市民の福祉の増進及び公平かつ公正な市政の発展を図ることを決意し、ここに「いなべ市議会基本条例」を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、合議制の機関である議会の役割を明らかにするとともに、議会及び議員の活動原則等の基本的事項を定めることにより、市民の福祉の増進及び公平かつ公正な市政の発展に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 いなべ市議会(以下「議会」という。)は、二元代表制の下、いなべ市民(以下「市民」という。)の代表としての自覚と誇りを持ち、その負託と信頼に応え、公平かつ適正な議論を尽くすとともに、議決責任を強く認識し、真の地方自治の実現を目指すものとする。

第2章 議会及び議員の活動原則

(議会の活動原則)

第3条 議会は、市民の代表として、次の各号に掲げる原則に基づき活動しなければならない。

(1) 議会運営の公平性、透明性及び信頼性を確保し、市民に開かれた議会を実現するため、情報提供を積極的に行うこと。

(2) 市民に対する説明責任を十分に果たすよう、分かりやすい説明に努めること。

(3) 市民の多様な意見を的確に把握するとともに議員間討議を活性化することにより、市政に関する政策立案及び政策提言に積極的に努めること。

(4) 市の政策決定及びいなべ市長その他の執行機関(以下「市長等」という。)の事務の執行に関し、監視と評価を行うこと。

(議会の災害時対応)

第4条 議会は、大規模災害等から、市民の生命、身体及び財産を保護し、並びに市民生活の平穏を確保するため、効果的かつ機動的な活動が図られるよう議会としての体制の整備に努めるものとする。

2 議会は、災害等の不測の事態が発生し、またそのおそれがあるときは、必要に応じて災害対策本部と情報を共有するものとする。

(議員の活動原則)

第5条 議員は、議会を構成する一員として、次の各号に掲げる原則に基づき活動しなければならない。

(1) 市民の代表としての責任を自覚し、市民の福祉の増進並びに公平かつ公正な市政の発展を図るため、自由闊達な討議を尊重して議会の合意形成に努めること。

(2) 市民の多様な意見を的確に把握するとともに、日常の調査及び研修活動を通じて、自らの資質の向上に努めること。

(3) 議会活動を最優先するよう努めること。

(会派)

第6条 議員は、議会活動を円滑に実施するため、政策を中心とした理念を共有する議員で会派を結成することができる。

2 会派は、政策立案及び政策提言のために調査研究に努めるものとする。

3 会派は、必要に応じて会派間で調整を行い合意形成に努めるものとする。

4 議長は、必要に応じて会派代表者会議を開催することができる。

第3章 議会と市民の関係

(会議の公開)

第7条 議会は、秘密会を除く全ての会議を原則として公開とする。

(情報の発信及び共有)

第8条 議会は、市民と情報を共有するため、多様な広報手段を活用し、積極的にその有する情報を発信し、説明責任を十分に果たさなければならない。

2 議会は、議案に対する議決の結果及び各議員の表決を公開しなければならない。

(市民参加及び連携)

第9条 議会は、公聴会制度及び参考人制度を活用して、議案審議及び審査に反映させるように努めるものとする。

2 議会は、請願及び陳情の審査に当たっては、その趣旨を理解するため、請願者又は陳情者の意見を聴く機会を設けることができる。

3 議会は、市民の意見を政策立案及び政策提言に反映させるため、市民及び団体との意見交換の場を設けることができる。

(議会報告会)

第10条 議会は、議決責任を深く認識し、市民に説明責任を果たすため議会報告会を開催するものとする。

第4章 議会と執行機関の関係

(市長等との関係)

第11条 議会は、二元代表制の下、市長等と常に緊張ある関係を保持し、事務の執行の監視と評価を行うとともに、政策立案や政策提言を通じて、公平かつ公正な市政の発展に取り組むものとする。

(政策等の説明要求)

第12条 議会は、市長が提案する重要な政策、計画、事業等(以下「政策等」という。)について、政策等の形成過程の透明性を図り、議会における論点を明確にするため、次の各号に掲げる事項について、明らかにするように求めるものとする。

(1) 政策等の提案に至った背景、目的及び効果

(2) 他の自治体の類似する政策等との比較検討

(3) 総合計画等における位置付け

(4) 関係する法令、条例、規則等

(5) 政策等の実施に係る財源措置及び費用

(6) 前各号に掲げるもののほか、議会が必要とする情報

(予算及び決算における政策説明)

第13条 議会は、予算及び決算の審議に当たっては、市長等に対し、施策別又は事業別の分かりやすい説明及び資料の提出を求めるものとする。

(資料請求)

第14条 議会は、市政の調査及び研究並びに会議における討議に資するため、市長等に対し、その執行する事務に関する資料の提出を求めることができる。

(質問等)

第15条 議員は、会議において質問又は質疑(以下「質問等」という。)を行うに当たっては、当該質問等の趣旨を明確にしなければならない。

2 会議における質問等は、一問一答方式で行うものとする。

3 議会は、閉会中に緊急を要する事案が発生した場合、議長と協議の上、市長等に対し文書で質問を行い、文書による回答を求めることができる。

(確認機会の付与)

第16条 市長等は、会議における質問等に対して、議長又は委員長の許可を得て答弁に必要な範囲内で当該質問等の趣旨を確認するための発言をすることができるものとする。

(監視及び評価)

第17条 議会は、市長等の事務の執行が適正かつ公平性及び効率性をもって行われているか監視し、及び評価するとともに、必要があると認めるときは、適切な措置を講ずるよう促すものとする。

2 議会は、議決機関としての機能強化のため、地方自治法(昭和22年法律第67号。以下「法」という。)第96条第2項の規定により積極的に議決事件の範囲の拡大に努めるものとする。

(議会意見の尊重)

第18条 市長等は、予算及び政策形成過程において、議会で集約された意見を最大限尊重するよう努めるものとする。

第5章 議会力及び議員力の強化

(自由討議の保障)

第19条 議会は、言論の府であることを認識し、政策及び課題に対して合意形成を図るため、議員相互間の自由討議を保障するものとする。

(予算の確保)

第20条 議会は、二元代表制の趣旨を踏まえ、議決機関としての権能を自覚するとともに、より円滑な議会運営を実現するため、必要な予算の確保に努めるものとする。

(政務活動費)

第21条 会派及び議員は、政策立案、調査研究その他の活動に資するため、法第100条第14項に規定する政務活動費を厳正かつ適切に活用するものとする。

2 会派及び議員は、政務活動費の使途の公正性及び透明性を確保し、市民に対して使途の説明責任を負うものとする。

3 会派及び議員は、政務活動費による活動状況を公開しなければならない。

(政策立案及び提言)

第22条 議会は、政策立案能力の強化に努め、市民の立場から、条例の提案、議案の修正及び決議等の政策提案を行うとともに、市長等に対し、政策提言を行うものとする。

2 議員が予算を伴う条例案を提案するときは、あらかじめ市長と協議するものとする。

(調査機関の設置)

第23条 議会は、議会活動及び政策の重要案件に関する調査のため必要があると認めるときは、議決により市民、学識経験を有する者等で構成する調査機関を設置することができる。

(情報通信技術の積極的活用)

第24条 議会は、議会力及び議員力の強化を図るため、情報通信技術(ICT)を積極的に活用するものとする。

第6章 議会運営及び体制整備

(議会運営の原則)

第25条 議会は、市民に開かれた議会運営を行うものとする。

2 議会は、合議制の機関として、民主的かつ効率的な運営を行うものとする。

3 議会は、言論の府として議員の発言を保障し、積極的に議員相互間の活発な議論が行われるよう努めるものとする。

4 議会は、政策を提言する機能を十分に発揮するため、議会組織の柔軟な活用に努めるものとする。

5 議会は、自らの改革に継続的に取り組むものとする。

(委員会)

第26条 議会における法第109条に規定する委員会(以下「委員会」という。)は、それぞれの目的に応じ、事案の専門性、特性を考慮の上、適切に設置するとともに、その機能が十分に発揮されるよう運営するものとする。

2 委員会は、審査、調査及び研究に当たり、市民に分かりやすい議論を行うように努めるものとする。

3 委員会は、議会の閉会中においても、市民等との情報共有及び意見の聴取のため、必要に応じて意見の交換及び収集を行うものとする。

(議長及び副議長)

第27条 議長は、議会全体の代表者として、中立性及び公平性を確保して職務を行わなければならない。

2 議長は、議場の秩序を保持し、議事の整理に努め、及び議会の事務をつかさどる。

3 副議長は、議長を補佐し、議長に事故があるとき又は議長が欠けたときは、前2項の規定に基づき議長の職務を行うものとする。

(議会図書室)

第28条 議会は、議員の調査研究に資するために設置する議会図書室の充実に努めるものとする。

2 議会図書室は、議員のみならず、誰もが利用できるものとする。

(研修の充実)

第29条 議会は、この条例の理念に基づき、議員の政策形成能力、立案能力及び資質の向上を図るため、議員研修の充実及び強化を図るものとする。

(議会事務局)

第30条 議会は、政策立案能力及び政策提言能力を高めるため、議会事務局の機能強化及び組織体制の充実を図るものとする。

2 議会事務局の職員は、常に議会の活性化、充実及び発展を心がけ、職務に専念するものとする。

第7章 倫理、身分及び待遇

(政治倫理)

第31条 議員は、市民の代表として、議会の権能と責務を深く自覚し、高い倫理観を保持し、その使命の達成に努めなければならない。

(議員定数)

第32条 議員定数は、効率的な議会運営の視点からだけではなく、市民の意思を市政に十分に反映させることが可能となるように定められなければならない。

2 議員又は委員会が議員定数を改正しようとする場合は、行財政改革の視点だけでなく、市政の現状と課題及び将来の展望を考慮するとともに、参考人制度及び公聴会制度を活用するものとする。

(議員報酬)

第33条 議員報酬は、市民の負託に応える議員活動への対価であることを基本とし、定められなければならない。

2 議員又は委員会が議員報酬を改正しようとする場合は、行財政改革の視点だけでなく、社会経済情勢及び市の財政状況を考慮するとともに参考人制度及び公聴会制度を活用するものとする。

第8章 最高規範性、見直し手続等

(最高規範性)

第34条 この条例は、議会運営における最高規範である。

2 議会は、議員にこの条例の理念を浸透させるため、任期開始の日以後速やかに、この条例に関する研修を行わなければならない。

(検証及び見直し手続)

第35条 議会は、この条例の目的が達成されているかどうか、特別委員会において年1回検証するものとする。

2 議会は、前項の検証の結果、議会に関する条例、規則等の改正が必要と認められる場合は、特別委員会において適切な措置を講じるものとする。

3 議会は、この条例を改正しようとする場合は、本会議において、改正の理由及び背景を詳しく説明しなければならない。

(他の条例との関係)

第36条 この条例は、議会に関する基本的事項を定める条例であり、議会に関する他の条例、規則等を制定し、又は改廃する場合においては、この条例との整合を図るものとする。

(委任)

第37条 この条例の施行に関し必要な事項は、議長が議会に諮って別に定める。

この条例は、平成29年4月1日から施行する。

いなべ市議会基本条例

平成29年3月28日 条例第7号

(平成29年4月1日施行)

体系情報
第2編
沿革情報
平成29年3月28日 条例第7号